イバラの道が続く

モウリーニョがオールド・トラッフォードから去ってもうかれこれ3ヶ月。彼はアジアカップやプレミアリーグの解説などの仕事を引き受け、監督から手を引いたかのような生活を送っているが本心は監督として再び、頂点を目指したいだろう。
そしてインテルでのあのCL優勝から約9年が経った今、彼はキャリアの分岐点に立たされている。昨年末まで率いたマンチェスターユナイテッドでは不運も重なり、不振にいたり結局最後は解任という形でユナイテッドと別れを告げたのだ。これでインテル後の解任はマドリー、ブルース、ユナイテッドと3度味わっている。悲しいことに今彼は過去の人として扱われつつある。
3年目のジンクス。どうしても最近はこのイメージが浸透している。事実、2年目に成功を収め、その翌シーズンは成績が振るわない。成功は長く続かない。
皮肉なことにユナイテッドでの挑戦は自身の監督キャリア史上最悪だと言えるぐらいのものだった。1年目は意地のリーグカップとEL制覇だったが勝負強いはずの2年目はまさかの無冠。就任2年目の無冠は初めてのことだ。しかもその年はライバルペップ率いるシティに独走を許してしまう。これほど屈辱的なことがあるのだろうか。
獲得した勝ち点(81)も例年であれば、優勝さえできる程だった。運に恵まれなかった中、翌シーズンでは開幕前からシーズン中の解任が報道されるほど、おかしな状況にあった。そして開幕でホームに迎えたレスター相手に2-1と辛勝。しかし、モウリーニョの顔には少しほっとしたような穏やかな一面を見せた。しかし、この開幕から20試合後、クラブからの解任を言い渡される。稀代の名将スペシャルワンもユナイテッドの崩壊を食い止めることが出来なかった。
なぜ彼のチームは崩壊してしまうのか。この訳を考えてみたい。
まず、考えられるのは彼から課せられるタスクをこなせない選手との対立だ。
有名な話だがマドリー時代に絶対的エースのロナウド(現ユベントス)は元々前線で守備をするタイプではなかった。そのため、前線で汗かき役となっていたディマリアの負担を減らすため、CBのぺぺを中盤のアンカーに起用した。しかし、ロナウドはこの采配に不満を表し、「もっと攻撃するべきだ」とメディアの前でコメント。これに対してモウリーニョはロナウドに対して練習中に「お前がもっと守備をしろ!」と怒鳴りつけた。ここから求心力を失い、聖イケルとも呼ばれたカシージャスとも修復不可能な程に対立。ファンや首脳陣からの支持を失い、3年目終了後に失脚。
このように厳格な規律に反感を持つ選手が当然現れてしまう。昔なら、怒鳴りつけ、選手が奮起していたのだがもはやそういう時代は終わってしまったのだ。残念なことに上手く選手と付き合わなければ先にクビを切られるのは監督となってしまうのだ。今では代理人と選手の方が監督より力を持っているとも言われるようなこともある。
モウリーニョのやり方が時代遅れや欠点などと言うつもりは1ミリもない。しかし、流石のモウリーニョでさえも時代に逆らうことは出来ない。
2つ目は戦術とプレッシャーだ。
彼の代名詞、堅守速攻は完成形に持っていけば崩せない守備から一気にスピードアップし、カウンターに繋げられる恐ろしいものだ。しかし、集中力の欠陥やコンディション不良などの選手が穴になりかねない弱点もある。
また、モウリーニョのサッカーは常に守備を求められ、常にミスは許されない状況である。そのため、2年目までは選手のメンタルが持つのだが3年目はふと気が抜ける選手が多く、不振に至るケースが多いのだ。
またモウリーニョは負けないことを考える。そのため、リスクを負ってまで点を取りに行かず、最低限勝ち点を拾い積み上げていく。確かにこれで成功してきたがモウリーニョの率いるクラブは古くからの歴史を築き上げた強豪であり名門。守るだけでなく、攻めることも要求される。そこからファンの支持を失うこともあるのだ。
そして最後にここ数年、なにかかつてのような元気がない事が気になる。
インテル時代と比べると表情が常に暗い。確かに元々彼は笑顔が少ないが時に激しく選手に指示を出し、レフリーの判定に納得いかなければ食いつく。しかし、年々そんな姿も減り、常に何か不安を抱えてるかのような雰囲気を醸し出しているのだ。
しばらくの間、栄光を掴んでも結局最後は解任という悲しい終わり方で失敗と捉えられることが大半でもはや過去の人として扱われ始めているのなら、元気がないということも理解ができる。
今、モウリーニョはかつて経験した事のないような岐路に立たされている。もはや、次のクラブでの失敗は許されない。今、密かに不調に嘆く古巣インテルの復帰が囁かれている。
ファンからの支持も絶大でモウリーニョも度々インテル愛を語っていた。しかし、そこで成功がなければ彼はどうなるか分からない。来シーズンからはモウリーニョにとって、自らの栄光を取り戻す挑戦が始まるだろう。

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